「ジャック。水兵杉田に、私が見舞に来たといえ」
リット少将はおもむろに口を開いた。
「へえい」
と答えてヨコハマ・ジャックは、憎々しく幅の広い肩をゆすぶって寝台に近づいた。
「こら、杉田水兵。飛行島の団長さまリット閣下がおいでになったぞ。眼をあけて、御挨拶を申しあげるのだ」
杉田はなにも答えなかった。ただ太い眉がぴくりと動いただけで、とじつづけている瞼をあけようともしない。
「太い奴だ。こら杉田、眼をあけろというのに。――こんなにいってもあけないな。うん、じゃあいつまでもそうしていろ。こうしてやるぞ」
と手をさしのばして、杉田の顔をつかみかかろうとするのを、ドクトルは横合からさしとめた。
「患者に手をかけてはならぬ。私は主治医だ」
「なにを、――」
「おいジャック。もういい、やめろ」
と、リット少将はジャックをとめた。
ドクトルはその方を向いて、
「リット少将。このような乱暴がくりかえされるのでありますと、私はこの患者の生命を保証することはできませぬ」